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信託口口座と信託専用口座とははなにか RECRUIT

信託した財産は受託者個人の財産と"ごっちゃ"にならないのか(分別管理義務)」で受託者は信託財産と自分個人の財産とは分けて管理しないといけないと書きました。
では、信託財産がお金の場合、受託者はどうやって管理すれば良いのでしょう?
抽象的な言い回しをすると「財布を別々にしなさい」ですし、法律の文言では「区別できるように計算を明らかにする」と書いています。
実際には、2つの方法が考えられます。

ひとつはそのまま現金で管理して、本当に信託財産用の財布に入れて金銭出納帳のような帳面で管理する方法です。
少額ならそんな方法で十分かもしれません。
ただ、高額になると盗難や火災などの危険もあります。貸金庫に入れておくという方法も考えられますが、いちいちの出し入れはかなり大変になるでしょう。
それに万が一出納帳と残高が合わなくなったときは、現金管理では実際の出し入れの記録が残らないのでどこで合わなくなったのか調査も難しいので、管理がずさんだと言われかねません。

もうひとつは、やはりなんらかの銀行口座に入金して管理する方法です。
これなら、紛失等の危険も少ないし、通帳はもちろん銀行に実際の入出金の記録も残るはずなので、自分の記帳している出納帳と照らし合わせることもできます。
この場合、次の2つような口座の作り方が考えられます。
どういう性質の口座なのか、メリット・デメリットも含めて考えてみたいと思います。

1 信託口口座
 口座の名義に「これは信託財産であるお金を管理する口座である」とわかるような表示をした口座です。
 例えば「委託者甲野一郎信託口乙野二郎」とか「受託者乙野二郎信託口」といった感じの名義にするわけです。
 成年後見人が金融機関に後見開始の手続をして作る口座が「甲野一郎成年後見人乙野二郎」というい名義になるのと同じような考え方です。

 メリットとしては、これなら名義でこの口座に入っているお金は信託財産だから受託者個人の財産ではないと明確ですので、受託者としては法律の「分別管理義務」にかなうと思います。
  デメリットとしては、信託口口座の開設に応じてくれる金融機関が少ないということです。

 一部の都銀や口座開設に積極的に応じてくれる金融機関でさえ、信託契約書を公正証書で作っていなければまず応じてもらえませんし、公正証書で作った上でなお金融機関の審査も信託契約の適法性や受託者が欠けた場合に適切に後継者に引き継げる条項があるかなどかなり厳格なようです。
 そもそも、民事信託というものが銀行の商品としてあり得ないからだと思いますが、金融機関の窓口で「信託口口座」という意味がわからない場合も多いようです。
 私も一度、ある銀行の窓口に「信託口口座を作る必要がある案件があるのだが可能かどうかと、可能ならどんな資料を用意すれば良いか」と問い合わせたら「本店にまで問い合わせたが、わかる人間がいませんでした。」と回答されたことがあります。
 なので、そもそも開設すること自体がかなりハードルの高い口座だと言えると思います。

2 信託専用口座
 通常の受託者個人の名義の口座を用意して、この口座で信託財産を管理すると信託契約に明記しておく方法です。
 
 メリットとしては、信託口口座と違い、通常の受託者名義の口座ですので簡単に作れます。
 
 デメリットですが、同じく通常の受託者名義の口座ですので、当事者以外にはこの口座に入っているお金が信託財産になっているとわからないという点です。
 税務署くらいであれば当初からキチンと税務上の信託の届出等をした上で何かあったときには信託契約書を示してこれが信託専用口座であると説明すれば納得してくれると思いますが、相手が受託者の一般の債権者の場合は単なる受託者個人の口座にしか見えませんので差押えをしてくると思います。
 また、口座を開設した金融機関も受託者個人の口座としか認識していませんので、例えば、受託者が死亡した場合、信託契約に後継受託者の定めがあったとしても、金融機関は口座を凍結したり、相続人からの払い出ししか応じず、引き継ぎができない事態となることがあり得ます。

以上のとおりですが、実務上はおそらくですが、特に地方などは信託口口座を作るのはあまりにハードルが高いので、信託専用口座か、少額であれば委託者(又は受益者)名義の口座を、通帳・キャッシュカード等を預かって管理しているのかなと思います。
それでは適切とはいえないと思いますが、デメリットやリスクを理解していただいた上で、「分別管理」という法律上の義務を行うことを優先するためにはやむを得ない場合もあるのかなと思います。


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