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司法書士は登記・供託手続と裁判所提出書類の作成の専門家です。

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家族信託は相続税や贈与税などの税金対策になるか

司法書士は税金の専門家ではないという前提での説明になりますが、結論から言いますと、通常、信託したことによって税金がお得になるようなことはまずないと思います。
民事信託は、資産管理や資産承継の手法ですから、それ自体は税金とは関係ありません。
委託者が自分の財産を管理するために受託者に財産を託しても、その恩恵を受けるのは受益者としての委託者ですから、権利関係に動きはありませんので、そこに課税が生じたり生じなかったりする余地はないからです。

税務上信託は、受益権をその財産として見ますから、受益者を委託者以外の者とする信託の場合は、委託者から受益者にその財産を贈与したとみなされて贈与税の課税が生じることがあります。
同様に、委託者兼受益者として信託が継続してきて、その委託者兼受益者の死亡によって、新たな受益者が現れたり残余財産帰属者が現れれば、相続や遺贈とみなして相続税の課税が生じることがあるはずです。
これらは受益権を財産として考えれば別に損でも得でもない関係だと思います。

信託独特の特徴によって課税が動く場合もたしかにあるようです。
例えば、賃貸物件などの収益不動産を複数所有している場合の所得税の計算では、一部の不動産に利益が出て一部の不動産に損失が出ている場合、その利益と損失を相殺させる「損益通算」ができますが、一部の不動産を信託していてその不動産に損失が出た場合は、信託していない不動産の利益と通算できない、つまり所得が多い形で申告することになります(ちなみに、信託不動産に利益が出て、信託していない不動産に損失が出た場合は通算できるそうです。)。
他にも、収益不動産を信託する場合に、受益権を、財産本体の帰属である「元本受益権」と、賃料収入等の収益を受け取る権限として「収益受益権」に分けるなど複雑な信託をした場合、課税する財産の評価方法に変化が出ることがあるそうです。

しかし、これらの影響で税額が増えたり減ったりするからといって、それを目的に複雑な信託を組むことは考えられないと思います。
そして、税金はともかくとして信託を組むと、受託者はその信託に応じた「調書」や「計算書」を税務署に提出する義務が生じます。
どんな簡単なものでも税務署に書類を提出するというのは相当面倒な作業ですし、そもそも何を提出しなくてはいけなくて何を提出しなくて良いという判断は税理士さんでなければ相当難しいと思います(事実、司法書士である私では「提出する書類がある。」という情報はありますが、それ以上はわかりません。)。
しかも、提出しなければ罰則もあり、罰則が適用されなくても、もし税務調査が入った際には、例えば単なる自益信託を受託者への贈与をみなされるような不利な扱いを受ける可能性もあります。
つまり、税金が掛かる掛からないに関わりなく税理士さんのお世話になった方が良いということになると思います。

「じゃあ、なんでそんな、最低でも手間が増えるような面倒くさい民事信託や家族信託を勧めるんだ!?」とお叱りを受けそうですが、「所有者が将来認知症になってからも問題なく不動産を売却できる手段を講じておきたい」とか「体の動かない所有者に代わって家族が引き続き家族の責任で財産の管理をしていきたい」とか「先祖代々の屋敷を次代だけでなく遺言でもできない2代先くらいまでは承継の道筋をつけておきたい」というニーズを解決する手段となるからだと思います。
つまり、決して金銭的な「お得」ではありません。手間も掛かるし費用も掛かります。受託者になる方には長く負担になる事務があるかもしれません。
そして、最低でも税務署への調書の提出だけでも税理士さんのお世話になる必要があると思います。
しかし、上記のニーズに100%応えるには現行民事信託しかありません。

民事信託や家族信託は目的を果たすための手段です。
法的手続ですからメリット・デメリットは当然あります。
別に、なんでも家族信託しなさいというわけではなく、そのメリット・デメリットをよく検討した上で、ある意味妥協点を見つけて自分に合った適切な手段を選択していただきたいと思います。


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