「信託の当事者」のページで"受益者"という言葉を「信託の利益を受ける人」と説明しました。
信託の契約の当事者は委託者(託す人)と受託者(託される人)の二者間で成立するのに、どうしてそれとは別に受益者なんていう存在が現れるのか?
研修などを受け始めた当初はその点が腑に落ちませんでした。
で、受益者が持っている受益権というものは何なのかという話ですが、本や法律では難しい言葉で色々書いていますが、私の勝手な解釈と私見で簡単に書くとこんな感じなのかなと思います。
例えば信託する財産が不動産の所有権をイメージして考えてみます。
信託契約をしていなければその不動産には所有権を持っている所有者がいます。
所有者さんは、その不動産を賃貸をしていれば家賃をもらったり、売却すれば売却代金をもらう権利があります。
逆に、賃貸していれば借主さんがちゃんと使えるように管理する責任がありますし、売却するのであれば売買契約書の内容を確認して印鑑を押したり売買が成立すれば買主さんに物件を引き渡す責任もあります。
つまり、所有者さんは不動産から生じる利益を受ける権利と管理や処分をする権限(責任)の両方を持っていることになります。
2つ合わせて所有権と言えるかもしれません。
そして、信託をするということは、この不動産の所有権から管理や処分をする権限(責任)を切り離して委託者(所有者さん)から受託者に渡すことですから、委託者の手元には不動産から生じる利益を受ける権利が残ることになります。
この権利が受益権です。
ですから、この受益権を委託者の手元に置いたままであれば"委託者イコール受益者"ということになりますし、そして信託の性質や信託契約の内容から許されるものであるなら、この受益権は委託者から別の人に渡すこともできます(もちろん実質的には「財産のオーナーの権利」を渡すわけですから贈与税等の課税の関係は発生します。)。
そしてここからは、一般の方々は気にする必要のない話になるかもしれませんが、信託によって分離する前であれば所有権の一部ですので、その不動産からこれらの利益を受けることができますが、分離して受益権になってしまうと、その不動産を直接支配する権限を受託者に渡していますので、受益者は受託者を飛び越えてその不動産から直接利益を受けることができません。
つまり、受託者に対して財産から生じる利益を自分に渡すように請求する権利つまり"債権"に性質が変わると考えられます。
物権ではなく債権であれば契約自由の原則が働きますので、信託契約等で、ある程度自由に受益権の内容や帰属先を決めることができるという構造だと思われます。
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